アクセスランキング

【恐いい話】神社の主にお礼

      2018/05/25

九州を走り回っていた頃、その日はキャンプ場に連泊することにして、近くの山に軽装登山に行きました。

なんとなく順調に上り、あっさり山頂到着。

自転車で胃袋の燃費が悪くなっていた私は、持ってきた食料を全部たいらげ、山頂で昼寝をしてしまいました。

気が付くと夕方になっており、既に薄暗い。

こりゃいかんと下山を開始しました。

しかし、というかやはりというか、しばらく歩いているうちに、目印テープが見えなくなっていることに気が付きました。

登山経験が少なかった私は、ここで焦ってしまい、さらに泥沼にハマるという不始末をしでかしました。

そのまま山を下ろうとしてしまったのです。

行けども行けどもテープは見つからず、沢に行き当たったときに我に返りました。

このまま下っても更に迷うだけだ。

食料もない。

水は沢で補充することができましたが、食料ばっかりはどうしようもない。

空腹による手の痺れを感じていました。

まぁ1日くらい食わなくても死にはしない。

いったん落ち着いて考え直した後、このまま下ってもどうしようもないと考え、野営することに決めました。

といっても、軽装です。

テントもシュラフもなしに春山で一晩を過ごすのはちと辛い。

幸いライターは持っていたので、暖をとるためにたき火をすることにし、薪を集めだしました。

枯れ木を抱えながらうろうろしていると、

不思議な音…というか、声?のようなものが耳に入ってきました。

よく聞くと、子供か女の子が会話しているような、なんとも現場に場違いな声。

後から考えればどう考えても異様な声なわけですが、当時の心理状態でそんな事を考えるわけもなく、人がいる!と感じた瞬間に、

「誰かいるんですかー?」

と叫んでいました。

そうするとピタっと声がやみ、少し立つと何事もなかったかのように元の会話が始まります。

私がもう一度、

「どなたかいませんかー?」

と叫んでみると、やはり一瞬会話が止まるものの、またぺちゃくちゃとしたおしゃべりのような声が聞こえはじめました。

とにかく人がいる、きっとこちらの声を聞き違いだと思っているんだろうと考えた私は、声のする方へ行ってみることにしました。




声はいまいる位置より上方、ちょうど、崖とも呼べそうな岩場の上あたりから聞こえていたので、多少迂回することになります。

もうほとんど辺りが見えないのでかなり怖かったのですが、人恋しさには勝てず、必死で声のするほうに近づきました。

「んー きゃははは ねー」

と、まだ意味はわかりませんが人の声だと確信するようになってきた時にもう一度

「すいませーん」

と声をかけてみたところ、また声がピタっとやみ、今度は何も聞こえなくなりました。

焦った私は声のしていた方向へ…

藪の中を転がるように進んでいくと、ちょっとひらけた場所に出ました。

「すいませーん、誰かいませんかー?」

今思えば我ながら情けないと思うのですが、人恋しさ全開の私は、辺りを見回しながらそんな言葉を叫んでいたと思います。

きょろきょろしていると、人工物っぽいものが見えました。

暗闇に目を凝らしてよーく見ると、どうも小さな神社(祠っていうの?名称わかりません。)のようです。

その時初めて、声と声の場所に誰もいないこと、そしてそこに神社があるというのが符合することに気が付いて血の気が引きました。

誘われたんだろうか…

ビクビクしながら辺りを見回すも、もうほとんど真っ暗。

これじゃどうしようもない。

真っ暗な中、朝までビクビクしながらすごすわけにもいかないので、神社の主にごめんなさい、広場を使わせてくださいと呻いて焚き火をすることにしました。

(藪の中を歩いている時も薪は放さなかったんです。)

とにかく火を焚いて落ち着くと、今度は神社に興味がわいてきました。

声も気になりましたが、この神社が関係しているのは間違いないだろうと考え、明かりになりそうな薪を一本とって神社に近づいてみることに…

照らしてみるとやはり古い神社で、木も色あせ、朱色もほとんど残っていない状態でした。

不思議と腐ってボロボロになってるところはほとんどなかったんですけどね。

中を見てみると、他の登山者が置いていったのか、まだ中身の入った焼酎の瓶と焼き鳥の缶が!!!

すぐにいただいてしまいたい衝動を抑え、何が祭られているのか確認しようと思ったのですが、薄まってしまっていて、文字を読みとることができませんでした。

祭られているものがとても気になりましたが空腹には勝てず、道に迷ったこと、広場を借りる事への感謝、お供えものをいただいてしまう事に対するお詫びと感謝を述べて、焼酎と缶詰に手を出させていただきました。

どちらも供えられてからそれほど日がたっていなかったようで、食べるのには問題なし。

このときの鳥缶のうまさには涙が出そうになりましたよ。

そうして焚き火と焼酎で体を温めつつ、その日の晩は怪異に遭うこともなく過ぎていきました。

朝になって神社の主にお礼を言い、辺りを片づけて帰り道を探すと、神社への道を発見。

それを歩いていくと元の登山道にぶつかり、無事キャンプ場に帰り着くことができました。

やっぱり助けてくれたんだろうなぁ…





 

 - 怖い話/怪談, 金曜日の恐い話 , , ,