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【恐いい話】むこうずねの痛みで気づく

   

私は今でもそうですが、猫が恐ろしくて恐ろしくてなりません。

従姉妹が「チロ」という、白い雄猫を可愛がっていたのですが、小さかった頃、私はこの猫にずいぶんといじめられたからです。

裸足で従姉妹の部屋を歩いたりすると、隙を見て、かかとに噛み付いてきたり、しゃっ!と鋭い爪でむこうずねをひと掻きしていくのです。

従姉妹の家に遊びに行くたびに、そんな目に遭いました。

今にして思えば、私のことを遊び相手……いい「おもちゃ」、からかい相手にしていたのかもしれませんね。

その従姉妹は5年前、急に肝臓ガンで亡くなりました。

もういけない、という電話があちこち駆け巡って、苦しむ従姉妹の周りに親戚皆が揃いました。

私も当然その中にいました。

従姉妹はもう、麻酔がなければ一刻もじっとしていられないほどの、ひどい苦しみ方でした。

見ていて辛くてなりませんでした。

ところが、沢山の泣きはらした目が見守る中、もう意識が戻らないだろうと思われていた彼女が、まるで親戚一同が揃うのを待っていたかのように、ぽっかりと目を開けたのです。

そうして周りの皆にか細い声で

「今までありがとう」

そう別れを告げたあと、こう続けました。

「窓のところにチロが来てるの。私が迷わないように迎えに来たのね……」

従姉妹はその数時間後、息を引き取りました。

担当のお医者さんが伯母の方を見て、ゆっくり首を左右に振った、その瞬間です。

私のむこうずねに鋭い痛みが走りました。

思わず声をあげたくなるほどの強烈なものでした。

すすり泣きが始まった病室をそっと抜け出して、後ろ手にドアを閉め、外であわてて靴下を脱いでみました。

そこにははっきりと、猫の爪によるものとおぼしき、引っ掻き傷が出来ていました。

従姉妹の言ったことは本当だったんだ。

本当にチロは来ていたんだ。

そう直感しました。

「大丈夫。俺が一緒について行くから」

きっと彼は彼なりに、

私にそう伝えたかったのかもしれません。

そう。

昔、さんざんからかって遊んだ、泣き虫のむこうずねを、昔そうしたように、ちょいと引っ掻いて行くことによって……。

 

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