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【怖い話】一瞬で連れて行かれちゃう

      2019/02/19

まだ独身で実家にいた頃の話。

私の部屋は階段を上がりきったところにあり、たいてい扉を開けたまま寝ていた。

ある朝、目が覚めたものの頭がもう一つハッキリせず、しばらくベッドでうだうだしていた。

「あーそろそろ起きなきゃな。」

とぼんやり考えた瞬間、階段の下のほうから

「ムーリーだー」

と子供が歌っているような声がした。

私が起きなきゃ、と心で思うたびにその声は聞こえてくる。

いや、でも起きなきゃいけないから起きるよと心の中で返事して体を起こそうとしたら

「ムーリーだー、お前はもう2度と起きない。」

とまた歌うような声が聞こえてきた。

はあ?2度と起きられないってことは、死ぬのか?

その頃仕事や人間関係に疲れていた私はつい、このまま死んでもいいかなあなんて思ってしまった。

その途端、ドタドタドタッと階段を上がってくる足跡、ノシノシと部屋に入ってくる気配がした。

確かに気配はするのに、姿は全然見えない。

でも確かにそいつは部屋に入ってきた。

「うわー、嘘です嘘です。まだ死にません。」

大声で叫びながら、全身バタバタさせて抵抗したが、見えないそいつは私の体にのしかかってきて手首をつかんで思い切り引っ張った。




ものすごい抵抗感と共に、自分が体から抜けたのがわかった。

あっと言う間に窓を通り抜け、空をドンドン上っていく。

実家の屋根が遠ざかる。

もうだめだ、死ぬんだ。

そう覚悟を決めたその時だった。

飼い犬が庭からこっちを見上げて、ものすごい勢いで吼えた。

ふっと手首が軽くなり、体が今度は実家の方へすごい勢いで引っ張られていき、ベッドで横たわっている自分の中にスルッと入った。

目が覚めた。

なんや、夢か。

怖かったけど夢でよかった。

ほーっとため息を付いた瞬間、ギャッとさけんだ。

夢の中で何ものかにつかまれていた手首に、赤い指の跡がくっきり付いていた。

会社の帰りに、普段は決して買わない高級ドッグフードを買って帰り、命の恩人の犬に食べさせてやりました。

どんなにつらくても、寝ぼけていても、死んでもいいやなんて考えちゃダメだよ。

一瞬で連れて行かれちゃうから。

あーでも夢だと言われたらそうかも。

だって寝ぼけてたのは確かだし。




 

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