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【怖い話】バス停で待ってる口裂き女

   

バスを待っていた。

もう夜も遅く最終バスの時間になっていた。

時間帯のせいか俺の他に待っている奴は一人しかいない。

変な奴だった。

顔の下半分はマスクで完全に覆われてる。

まだ若い女のようだが…

「私のこと、変だと思ってるでしょ?」

不意に声をかけられて俺は面食らった。

女の声は妙に低かった。

「いえ、別にそんな…」

女は声を上げて笑った。

「別にいいのよ。なれてるし。」

「はあ…」

俺は女の事が少し怖くなった。

昔こんな女が出てくる話を聞いたことがある。

確か…

「少し歩きません?どうせバスはもう来ないんだし。」

女に言われ不審に思って腕時計を見るともう日付の変わっている時間だった。

もうバスは出たあとだったのだ。

女は一人で歩き出した。

俺は首をひねりながらも好奇心からついていくことにした。

「夜道って独特の雰囲気があるのよね。ぼんやりしてると闇に吸い込まれそうな…」

何が言いたいんだろう?

俺は薄ら寒い物を感じた。

「あの…」

女の背中に声をかけた。

「…なんて呼べばいいですか?」

最初女がなんと言ったのか聞こえなかった。

「口裂き女。」

その瞬間俺は思い出してしまった。

子供の頃よく聞いた怪談のことを…




「ふふふ、脅かそうとしてると思ってるでしょ?でもね、本当なの。」

いつの間にか雨が降ってきた。

頬が冷たい。

女がマスクを取った。

化膿してまさに『裂けた』と言った感じに横に長く切れた口があった。

俺は言葉を失った。

女は立ち止まってぽつりぽつりと事故で口が裂け、応急処置をしたが間に合わなかった事など、『口裂け女』になった経緯を話してくれた。

女が口を閉ざすと俺はなんと言えばいいかわからなかった。

女は俯いて、泣いているように見えた。

「何でその話を僕に?」

女は俺の質問が聞こえなかったようにまた話し始めた。

「エイズの統計の話、知ってる?アメリカの偉い大学の先生が自分のゼミの学生に『もし自分がエイズになったらどうするか』と質問したの。何年にもわたってね。その結果はどうなったと思う?」

気づかないうちに手が汗ばんでいた。

そしてあることに気づいた。

なぜあの女は来るはずもないことを知っていながらバス停にいたんだ?

そして…

「エイズの撲滅活動などを行って自分のような悲劇が2度と起こらないようにする、と答えた学生は20%にも満たなかったそうよ。残りはほぼ一つの答えを選択した。『セックスをしまくって他の人にも感染してやる』ってね。」

女の声がすぐ耳元で聞こえているかのように感じた。

「人間って結局自分が理不尽な目にあったら同じ事を他人にもやってやろうって思ってしまうものなのね…私だって人間だもん。自分だけこんな目に遭うなんて…ね?」

女はコートのポケットから何かを取り出した。

…ナイフのようだった。

女は奇妙な笑みを浮かべて近づいてくる。

雨は先ほどよりも強くなっていた。

「最初に言ったでしょう?私は『口裂け女』じゃなくて…」

一瞬の静寂。

「く・ち・さ・き・お・ん・な」




 

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