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【怖い話】キィーーーーっと開いたら…

      2019/01/20

この話は、ある会社の社員寮に住んでいた時の話です。

当時、新入社員の俺は、入社と共に埼玉県の某市にある社員寮に入ることにしました。

その寮は、鉄筋コンクリート造りの3階建ての建物で、建物自体古く、築30年は経っているとの事。

寮の中もなにか陰気くさい感じがしました。

入居当日、一番乗りした俺は、3部屋空いていた中から2階の奥にある、日当たりの良い角部屋に入る事ができました。

その部屋は12畳程あり、なぜかクローゼットが4セットもありました。

1人で住むには広過ぎるくらいで、収納たっぷりと喜んだものです。

入社後、1人で住むには広すぎる室内と、4ヶのクローゼットを不思議に思っていた俺は、ある日上司に尋ねました。

すると、昔は4人部屋だったとの事

あの部屋で「4人はきっついなー」と思いながら納得したのでした。

寮生活にも慣れてきたある日、いつになく寝苦しい夜に、唐突にそれは起こりました。

なんともいえない、息苦しさと寝苦しさで眠れずに午前3時を過ぎた事を憶えています。

それまでの寝苦しさが可愛く思える程に、一瞬にして部屋の空気が変わりました。

重苦しく、ピンと張り詰めた空気はその部屋だけ別世界のようでした。
それまで聞こえていた周りの音も嘘のように消えました。

とたんに恐怖に包まれた俺は、ベッドに横になったままどうする事も出来なくなっていました。

ベッドに横になっていた俺の視線のその先には、壁一面にある、クローゼットの1つの扉に釘付けになっていました。

このまま見ていたらヤバイ、と本能的に思ったその瞬間、その扉が、「キィーーーー」といいながらゆっくりと開いたのです。

恐怖で身動き1つできない俺の目に映ったのは、その扉の奥で、俺を「ジトーッ」と見つめている1人の「男」でした。

クローゼットの中で、ひざを抱えてうつむき加減に座っているその男は明らかに俺を「ジーッ」と見ています。

しかしあまりにも鮮明に見えているその姿とは裏腹に、俺は一瞬にしてこの世のものではないとわかりました。

いかにもサラリーマンに見えるその男は、30代前半でグレーのスーツを着ておりメガネを掛け、非常に痩せています。

男は、何も言わず、ただずっとこちらを見つめているだけです。

その顔に血の気はまったくなく、とても暗い恨めしそうな表情でした。

一番強烈に感じたのは、その男の周りが漆黒の闇に包まれていることです。

この世とあの世があるのなら、その時のクローゼットの中は、間違いなくあの世の闇に包まれていました。

そのまま何分が過ぎたのかは、わかりません。

俺は、ただただ恐怖しながらその闇に包まれた男のいるクローゼット見る事しかできません。

何も言わず、しかし、何か言いたげなその暗い表情の男は、闇の中に消えて行きました。

俺はそのまま、ボーゼンとしながら朝を迎えたのです。

おばけが出たからと言って、仕事を休む訳にはいきません。

俺は眠い目をこすりながら、職場に向かいました。

その日の昼休みに、昨夜の出来事を上司に話した所、驚きながらも、その「男」の事について細かく聞いてくるではありませんか。

「何歳位だった?」

「顔の特徴は?」

「体形は?」




俺はその質問に答えていきながら、上司はその「男」を知っているのではないか?という疑念を抱きました。

一通り話し終えた所で、俺は聞いてみました。

「心当たりあるんですか?」

上司の答えは「わからない」の一言でした。

しかし、その表情からは、驚愕してると共に、明らかに「心当たりがある」と読み取れました。

と同時にこれ以上「聞くな」とも訴えている表情でした。

俺は、何か触れてはいけない事に触れてしまった感じがして、それ以上、その上司から何も聞くことは出来ませんでした。

それから2年後、社員寮も出て「あの夜」の事も忘れ掛けた頃、ある先輩と一緒に仕事をすることになりました。

その先輩は、俺と同じ社員寮に長年住んでいたこともあり、寮の主と言われてた人です。

おまけに社内の事情通で何でも知っていると評判の人でした。

半年ほど寮生活が重なっていたのですが、ほとんど話したことはありませんでしたが、一緒に仕事をするうちに親しくなり、思い切って、「あの夜」の事を話してみたのです。

その時の反応は、以前上司に話した時と同じものでしたが、1つだけ違う所がありました。

一通り話した所で一言、

「明日、写真持って来るから見てみろ」
との事。

それ以上は何も言いませんでした。

俺は長年引っかかっていた、「何か」が、わかるかも知れないと写真を待ちました。

翌日、約束通り先輩が写真を持ってきました。

その写真は、俺が入社する以前に撮られた社員旅行の集合写真でした。

その写真には、150人ほど社員が写っていましたが、写真を見てすぐに1人の「男」に目が釘付けになりました。

そう、あの夜クローゼットの中にいた、あの「男」が写っていたのです。

皆、笑顔で写っているその写真の中で、間違いなく、あの「男」が無表情で写っていました。

150人もの社員が写っている中で、なぜ一瞬にしてクローゼットの男に目が行ったのか自分でもわかりません。

しかし、「男」は間違いなく生前の姿をその写真に残していたのです。

「アッ」

と言いながら、驚愕している俺の様子を隣で見ていた先輩が、すべてを話してくれました。

「男」は元社員だった事。

あの社員寮に住んでいた事。

俺と同じ部屋に住んでいた事。

そして、今はもうこの世にいない事。

とても、あの寮が大変好きな方だったらしく、長年寮に住んでいたとの事。

でもある日、急死してしまったそうです。

どこで、どういう亡くなり方をしたのかまでは、いくら聞いても教えてもらえませんでした。

この話題自体、なにか社内ではタブーなような空気でしたが。

今でも、あの夜クローゼットの扉が開く音と同時に、そこに「居た」姿は鮮明に憶えています。

暗い表情をした彼が、クローゼットの闇の中で「ジーッ」と俺を見つめながら、何を伝えたかったのか俺にはわかりません。

しかし今でも、あのクローゼットの中でひざを抱えて座っているでしょう。

新しい入居者を待ちながら…深い深い闇に包まれて




 

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