【ゾッとする話】前方に見える登山者の影
2018/03/23
友人の話。
彼が山に登り始めた頃のことだ。
先頭にたって登っている時に、道が分からなくなってしまった。
その時、自分のはるか前を歩いている登山者の影が見えた。
明らかに道が無いような所を歩いているのが気にかかったが、その人について行けばいいやと歩き出した。
いきなり、後から来た仲間に腕をつかまれた。
ついて行くんじゃないと言われ、正しいルートに引き戻される。
前方を見ると、例の人影は背中を向けたまま、その場でじっと足を止めていた。
仲間に尋ねると、良くないものだとしか教えてもらえなかったらしい。
それからも何度かその人影を山で見かけたが、なぜか毎回同じ服格好をしていた。
他の登山者は皆、その姿を見ないようにしていたという。
先輩の話。
大学生の時、部活で冬山登山に参加した時のこと。
避難小屋の近くで厳しい吹雪となり道に迷ったのだという。
皆はもう生きた心地もせず、雪中で強引に野営するかどうか決めかねていた。
その時、誰かが道の先でライトを振るのが見えた。
先輩たちが声を上げて手を振り返すと、まるでついて来いというように歩き始めた。
助かったとばかりに後を追った。
いくら足を速めても、なぜか先導の人影には追いつけなかった。
女子の一人が奇妙なことに気がついた。
雪の上には、その人影の歩いた跡が残されていなかったのだ。
皆が黙りこくっていると、やがて小さいが明かりが見えてきた。
避難小屋の明かりだった。
先導していた影は、いつの間にか消えていた。
その人影がそこで遭難した人のものかどうかは分からなかったが、後日先輩たちはルート途中にあった遭難者慰霊碑に献花しに行ったのだそうだ。