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【ゾッとする話】きっくいさんとやっかいな鬼の話

      2019/08/14

小学校低学年の頃。

子供の頃の記憶がハッキリしている自分にしてはおぼろげな記憶なので、一部夢と混ざっているのではないかと思いつつ、なるべくハッキリしているところを。

病弱な姉は、多少元気にはなったものの虚弱だったため、夏休みの間は虚弱児のための病院施設のようなところに親と一緒に通っていた。

その期間、やんちゃで遊びたい盛りの自分は、母方の実家に預けられていた。

ある夏、そこに祖父母の親戚という人が来て、

「うちに泊まりにおいで」

と言われ物怖じしない性分の自分は、あっさりとついて行った。

その人たちは父母よりちょっと年上の、40~50代の人達だった。

元々山奥の祖父母の家から更に山を二つ超え、数軒のわらぶき屋根が建つ集落についた。

(母の実家のあたりでは珍しくない風景だった)途中、ダムの近くを通ったので今でもだいたいの場所はわかると思う。

そこは子供のいない家で、山肌に沿ったようなところなのにわざわざ離れがありそこには祖父母よりもかなり歳を取ったおばあさんがいた。

親戚夫婦はその人を「きっくいさん」と呼んでいた。

ヘンなところに撥音が入る地方なので、喜久井さんか菊井さんだと思う。

きっくいさんの部屋にはいろんなものがあって、子供心にとても楽しかった。

市松人形や、手毬、古民具、小さな箪笥などがいっぱいあった。

親戚夫婦は「おいでおいで」と自分を連れてきたわりには放置気味で、日中はほとんど畑か山仕事をしていた。

今思うと、目が見えないきっくいさんの遊び相手に連れて行かれたのだと思う。

きっくいさんは穏やかな老婆で、いろんな面白い民話のような話を聞かせてくれた。

たぬきに騙されて川の淵を風呂だと思って入り風邪をひいた男の話や、近くにある名勝の有名な岩の故事なんかだった。

部屋の中のものは何で遊んでも怒られなかったので、珍しいもので散々遊んだ。

木馬やシーソーみたいなものもあったと思う。

中でも奇妙だったのが、床の間に置かれたたくさんの小さな箪笥。

あちこち押したり引いたり小さな棒で突いたりすると、からくりが働いて引き出しが開くようになっていた。

大きさは当時の自分の頭くらいだったと思う。

いい香りがして、開くと香袋のようなものが入っていた。

きっくいさんは、「やっかい箪笥」と呼んでいた。

中に入っていた香袋は、きっくいさんが上手に作っていた。目が見えないはずなのにとても手際がよかったので、不思議でずーっと見ていた。
匂いからして茶葉やヨモギ、肉桂の類が入っていたと思う。

ところが、そのやっかい箪笥で遊んだことを親戚夫婦に言うと、すごく怒って、きっくいさんに

「子供の遊ぶものではなかろうが!」

と怒鳴っていた。

普段はきっくいさんに敬語で話していたのでとてもびっくりした。

きっくいさんは

「中身は無いから大丈夫」

と言っていたけど、香袋が10個くらい入っていたので怪訝に思った。

でも言ったらもっときっくいさんが怒られると思ったので言わなかった。

とてもドキドキした。

そのあときっくいさんがやっかい箪笥の昔話をしてくれた。

昔、このあたりに東から鬼がやってきて、女子供を取って食っていた。

食べられた人の魂はやっかい箪笥に逃げ込んだので、魂は食われなかった。

ある日、この村の妊婦が鬼に食われそうになったけど、とんちで鬼を騙して逆に鬼を食べてしまった。(三枚のお札みたいな感じ)

やっかいな鬼を食べ、自分とお腹の子供を守ったということで、妊婦は村中から褒められた。

ところが、やっかい箪笥に入った魂は、鬼がいなくなった事が理解できずずっとやっかい箪笥に篭ったまま成仏しなかった。

毎晩毎晩、家族や親類の枕元に立って泣き言を言うので村人は閉口した。

ここから先のオチを聞いたと思うのだけど、何故か覚えていない。

ただ、鬼に食われた人の魂が入っていたと言われたので、急に気持ちが悪くなってその日以後はやっかい箪笥で遊ばなかったと思う。

祖父母はとうに亡くなり、母に聞いてもその親戚のことは知らない、と言っていた。

祖父母どちらのお葬式にも、その親戚夫婦は来ていなかったと思う。

きっくいさんについては、中学生の頃に祖父母に聞いたところ「拝み屋さん」(うせ物などを見つけてくれる)だと言っていたので完全な夢ではなく実在していたと思う。

年齢からして、既に過去の人だとは思うけれど。

数年前、恋人と一緒にそのあたり(名勝)をドライブしていて、急になつかしくなり、覚えのある方に車を走らせてみたけれど、途中で見た覚えのあるダムのあたりから前年の台風で土砂崩れをおこしていて、通行止めの県の看板が立っていた。

今でも集落があるなら、道がそのままということは無いと思うのでもう誰も住んでいないのだろうと思う。

 

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