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沈まぬ太陽|図書室で偶然見つけた不気味な本の話

      2016/03/28

もう十年も前の話だが、裏の世界のようなものを見た事がある。

当時の私は友達のいないぼっち女子中学生で放課後や昼休みは学校の図書館で専ら読書に勤しんでいた。

小さい図書館だった為に一年くらい通うと興味のあった分野の本はおおかた読み尽くしてしまい、次はどの分野の本を読もうかと思案していると、一冊の本が目に入った。

タイトルは「沈まぬ太陽」という本で、今でも忘れない。図書館の一番奥の本棚の、一番下の段に置いてあった。本というよりは小冊子といった方が近いかもしれない。

表紙は太陽に月が溶かされ、下にある人間界と人間も溶かされているような絵だった。表紙を見た瞬間に絵が原子力爆弾を表しているのか?と考えたがそうでは無かったのだと思う。内容もまた奇妙だった。





あるページには押し花がされていたり、あるページには文章で

「太陽は沈まない。太陽が沈まないと隠れる事ができない」

と書いてあったり、またあるページからは変な絵が延々と書かれていた。

どのページの絵にも太陽は書かれていたが、一ページだけレモンがテーブルに乗っかっているだけの絵があった。

テーブルには
「ようこそ」
と書いてあった。さらに気付いてしまった。

その本はページ数が途中からバラバラだった。レモンの絵は真ん中にあったのにも関わらず1ページだった。

気味が悪かったのと、何か嫌な感じがしたので本を戻そうか迷ったが、好奇心には勝てずに本を読み進めた。

流石に破いて並べる訳にはいかないので対応したページを順に読んでいくと、レモンの絵はただの表紙であり、次のページから出てくる太陽が徐々に姿を変えて人間を溶かして、最後は太陽が人間の形になるという構図が完成した。
完成したところで、だと思う。

遠くから何か叫ぶような声が聞こえて同時に周りにいた人達が私をジロジロ見ていた。目つきはなんだかギラギラしていた。

居心地が悪くなって私は図書館を後にした。

外に出るとなんだか空気が濁っている感じがした。普段は全くそんな事は感じないのだが。

気にしすぎだと思い家までの帰路につくと、いつもと同じ道を通っているのに、見たこともないような景色が広がっていた。

無意識に進む。何故か不安感は無かった事を覚えている。

しばらく進むと見たこともないような防波堤で数人の釣り人が釣りをしていた。海は墨汁のように真っ黒、空は赤に近いピンク色だった事は覚えている。

変な形の魚が釣り人のバケツの中を暴れまわっている。

釣り人は近付いた私に一瞬驚いたようだが一瞥くれるとすぐに釣りに戻った。

離れようとした時ボソッと声が聞こえた
「喰われるぞ」
「え?」
と言ったのも束の間、私はカラスのような鳥に手を突つかれた。同時に釣り人がバケツに入れていた魚を鳥に向かって投げた。群がる鳥。
釣り人は、方角を指差すと
「急げ」と。

その方向に全力で駆け抜けた。途中一度だけ振り返ると、太陽が近づいて来ていた。釣り人や鳥、景色も蒸発していった。

そこで私は目を覚ました。

気付いたら病院のベッドの上だった。近くにいた看護師さんに話しかけるとすぐに医者を呼んでくれた。

話によると私は本を読みながら突然倒れ、1ヶ月まるまる病院で寝ていたそうだ。枕元にはクラスメイトが製作してくれた寄せ書きがあった。間も無く両親が到着して、二人とも号泣してしまい、宥めるのが大変だった。

後日談が3つある。

1つ目
裏の世界で助けてくれた釣り人は私が小さい頃に亡くなった叔父だった。

叔父と言っても遠くに住んでおり二度三度しか会ったことが無いそうだ。昔のアルバムに一緒に写っている写真があった。それからは毎年必ず墓参りに向かい、墓前で近況報告を欠かさず行っている。

2つ目
裏の世界で鳥に噛まれた傷は現実にもあった。

私は裏の世界を臨死世界だと最初は考えていたのだが、だったら体に出た噛み傷はなんだったんだと今でも思う。
精神的に受けたと勘違いすると体には傷が浮かぶ事があると聞いた事があるがそれだろうか。ちなみに倒れた時には全く外傷は無かったそうだ。
全身を鳥に噛まれていたらどうなったんだろうと今でもゾッとする。

3つ目
実は私が気を失っている間に一人クラスメイトが自殺していた。

Kという男子で私とは殆ど関わりの無いいわゆる不良だった。周りの評判もあまり良くなかった。

どう評判が悪かったかは割愛するが彼の寄せ書きには「沈まぬ太陽」という記述があった。彼が図書館で本を読んでいるところを見たことが無かったので驚いた。

後日、読む気は無かったが学校の図書館でもう一度本を探してみた。本は無くなっていた。

その後で、Kと仲の良かったSに話を聞くと、Kは私が気絶する前に読んでいた本を読んでみたかったようだ。Sは止めたがKは聞かず、図書委員から聞き出して本を借りて行ったそうだ。だが読んだ時点では何も起きず、呪いの書と名付け、燃やしてしまったそうだ。

徐々にKはおかしくなっていき、最終的には首を吊って自殺したそうだ。寄せ書きはおかしくなる寸前に書いたものだった。

その後は何も起きることなく、普通に大学を卒業して今は普通に仕事をしている。読書は今でも大好きだ。ただ一つ作者不明の作品は読まなくなった。





 

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