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いらっしゃいませ|もう一人の誰か

      2016/03/28

大学生のAは人をからかうのが好きで、例えばレストランに仲間4人で入り、店員が「4名様ですね~」と言うとAは「良く見ろよ、5人だろ~!」と言って脅かすのだ。

けっこうしつこくやるので、Aには本当に何か見えるんじゃないかと思うけれど、Aは人の反応を見て「うそだよー」とゲラゲラ笑う。

まわりの友達もなんども注意するけど一向にやめないのだ。





いつも仲間とつるんで飯を食べていたAは、たまには一人で食べようと、近くのファミレスに入った。Aは窓際の席に座った。

ウエイトレスが来て水の入ったコップをAの前に置いた。そしてAの向い側にも置いた。誰もいないのに。

Aは「あれ?」と思った。

「もしかしたらここに先に誰か座ってたのかも。それかウエイトレスが単に間違えたんだ。誰か来たらそのときどけばいいさ。」

ウエイトレスがオーダーを取りに来た。Aはナポリタンを注文した。

店には他の客はいなくなってしまったので、Aはやっぱり水はウエイトレスの間違いだと思った。

しばらくしてナポリタンがAの前に置かれた。そしてAの向い側にも‥。

Aは激怒してウエイトレスに言った。
「なんでオレ一人しかいないのに、2つも出すんだ!?」
ウエイトレスはびっくりして
「あれ?さっきは二人いたのに。」
レジにいた店員もAと入って来たのは二人だったと言う。

Aは非常に憤慨して店を出てしまった。

Aは怒りつつも自分がいつもやっているいたづらをやり返されたようで、もうこんなたちの悪いことは止めようと心に決めた。

しかし、それが始まりだった。

Aが店に入ると今度は店員の方が必ず一人多く間違えるのだ。それは、初めての店でも、旅行先の店でも、誰と行っても。満員電車の中にもかかわらず、Aの前だけ一人分空くようにもなった。

「もう一人の誰かがオレについてくる‥」Aは外にでられなくなった。ノイローゼ気味になり、体重も減り、別人のようになってしまった。

数カ月もAはその生活を続けていた。外にでられない、という事ではなく、「もうひとりの誰か」と接しないという生活である。

Aはこんなに時間がたったんだから、もう「誰か」はどこかへ行ったかもしれないと思い、久しぶりに外を歩いてみた。久しぶりの外は気持ちよかった。

Aはそのままレストランに入った。

レストランの中はわりと人もいて、明るい感じだった。Aは普通の席はまだ少し抵抗があるので誰もいないカウンターに座った。

自分がなんでこんなことで悩んでいたんだろうと思わせるくらいすがすがしい気持ちだった。

「いらっしゃいませ」

店員がカウンターのAの前に水を置いた。

そしてAの横にも、その横にも、その横もその横もその横も水を置いたのだった……!





 

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