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【怖い話】腹話術師

      2016/06/02

これは日本の話ではないけれど…

とある地方の小さな街に、寂しい一人暮らしの女性がいました。

楽しみといえば、週末の夜に訪ねる小劇場での芝居見物でした。

そんなある日、芝居の幕間にある余興が入ったのでした。

ハンサムな腹話術師が椅子に座り、膝の上に乗せた人形と馬鹿ばなしをする…よくある、何の変哲もない腹話術です。

しかしハンサムなだけではない、なんと美しい声なのだろう…と、ひと目みて彼女は、その腹話術師に恋をしたのでした。

次の週末も、また次の週末の夜にも、その腹話術の余興はあり、彼女の恋心はつのっていくばかりました。

意を決した彼女は、ある夜、余興が終わり幕が降りた後、楽屋を訪ねてみようと思い、行動に移しました。

しかし楽屋を訪ねた彼女に、扉の向こうから聞こえてきたのは

「残念ですが、お会いする気持ちはありません」

という彼からの冷たい返事でした。

彼女はとても残念に思いながらその夜は諦め、すごすごと楽屋を後にしました。

憧れの人と一対一で過ごしたい…彼女の願いはかないませんでしたが、その夜限りで諦めてしまうことはなかったのです。

一ヶ月ほど経った夜、彼女は一房の花を買って小劇場を訪れました。

幕間にはじまった、いつもの腹話術師の美声におもわず涙しました。

余興が終わり、幕が降りると彼女は席を立ち、楽屋を訪ねました。

今度は、もし合うことがかなわなくても、花束を扉の外に置いて帰るつもりでいました。

そんな彼女の強い想いが通じたのでしょうか

「では、お入りください」

という嬉しい返事が、扉の向こうから聞こえてきました。




ドアを開けて入ると、まるで、腹話術の舞台そのもののような演出。

奥の壁の前に椅子が置かれ、ハンサムな腹話術師が座り、膝の上には人形が置かれていました。

スポットライトだけが灯っていて、「彼」と人形、そして椅子を暗闇の中にくっきりと浮かびあがらせていました。

胸をドキドキさせながら、彼女が

「はじめまして…」

と呼びかけた時でした。

突然、椅子の上から何かが倒れました…

椅子の上には「人形だけ」が残っていました。

じっと彼女を見つめ

「分かったね…」

というようにうなづき、寂しげに、彼女に笑いかけたのでした。




 

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