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【怖い話】心の内で念じながら歩を進める

      2018/01/05

アタシが中学生の頃に、学校の先生が体験したお話です。

若い男性の教師で、趣味が登山だったのだそうです。

ある日の早朝、先生は、友人と2人で、近場の山に出掛けました。

それ程、高さがない山なので、半日ほどで登頂・下山が出来ると踏んだ彼らは、山の両端から一人で登り、山頂ですれ違い、下山をするという方法をとる事にしました。

そうすれば、夕方には、麓へ達する事が出来るはずでした。

先生が早速、歩き始めた矢先、激しい雨が降り出しました。

ぬかるんだ土に靴を取られつつ、数時間歩くうちに、雨は止みましたが、山頂へ達する頃には、陽が沈んでしまっていました。

幸い、登山コースには、道なりにロープが渡してあります。

暗い山道への不安はありましたが、持参したライトを点け、注意深く下山を試みる事にしました。

小一時間ほど歩いた時、前方に、人家を思わせるような灯りが…。

木々の隙間から、ちらちらと光って見えます。

しかし、その山中に建物があるという話は、聞いた事がありませんでした。

不審に思いながら、歩き続けていると…

その「灯り」が、登山コースの路上にある、なにか小さなものが光っているらしい事に、気がつきました。

更に近づいた時に…

その「灯り」には、目と鼻と口がある事が見てとれました。

そして、灯りを覆う、人がたの黒い影が。

登山コースの路上に、髪の長い女性が立っていて、その「顔」が、ほの白く常闇で光っているのでした。

…!!!




先生は、悲鳴を噛み殺しました。

助けを求めようもない、人けのない山中です。

どのように逃がれるべきかを、必死で考えました。

引き返して、反対側の斜面から下山をする体力は、残っていません。

となると、一本道ですから、前方にいる、得体の知れないものの傍近くを、避けて通るわけにはいきません。

ロープを握る手に、冷や汗が滲みます。

そして。

前方の「なにか」を無視する格好で、その脇をすり抜け、下山をする事にしました。

「見てない・見てない・俺はなにも見て・ない…」

心の内で念じながら、歩を進める先生。

そして、その「顔が光っている女性」のすぐ横を通った時…

前方の虚空へ向けられていた顔が、先生へと向けられました。

先生の歩みに合わせ、顔がゆっくりと移動します。

両者が、完全にすれ違いになった次の瞬間、耐えられなくなった先生は、全速力で山道を駆け降りました。

恐怖に駆られ、走り続け、しばらく後、山道が途切れ、開けた平地へと辿り付きました。

息を弾ませ、しばし、放心する先生。

その肩を、背後から、何者かが軽く叩きました。

咄嗟に、先生は頭を抱えてしゃがみこみ、

「ひーーーーっ、ひーーーーーっ」

声にならないような、掠れた悲鳴をあげました。

その肩を更に強く掴み、

「おい、大丈夫か?」

声を掛けたのは、懐中電灯を手にした友人でした。

先生の友人の方は、早い時刻のうちに、登山を断念していたとの事。

一向に下山して来ない先生を心配して、麓のあちこちを、捜索してくれていたのでした。





 

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