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【怖い話】寂しかった…声の主

   

これは私が中学生くらいの頃に母に聞いたお話で、母曰く実話とのことでした。

しかし、その後母は

「幽霊なんて見たことないわ」

などと言うなどその真偽は怪しいものです。

それでもこの話、子供を怖がらせる話にしては嫌に生々しいので、あるいは母も誰かにこの話を聞いたのではないかと思います。

では本題へ。

私の母は、看護師(当時は看護婦と呼んでいましたので、以後看護婦で進めます)をやっていました。

看護婦になるには医者と同様国家資格が必要でして、それを取得するために看護短大に通っていたそうです。

看護短大を出た看護婦は、実地研修代わりにその学校の大学病院に行くケースが多かったそうで、母もそこで勤めていたそうです。

余談ですが、

「君たちみたいなぺーぺーが他所の病院で使い物になるわけがない。うちで使ってやる」

のような高圧的な態度だったとか。

今も昔も病院というのはどうにも気に入らないところのようです。

さて、病院で亡くなった方の遺体というのは、地下などの霊安室に安置された後に葬儀場へ運ばれていくことが多いそうです。

そして、母が勤めていた大学病院ではその当時ある習慣がありました。
それは病院で亡くなった患者さんが出棺の際、手の空いたナース全員でそれを見送るというものです。

病院で亡くなった方というのは無念の思いを抱えた方も多いだろうことは察しがつきます。

せめて看護婦だけでも安らかに眠れるように祈りをささげる、そんな意味があったのでしょう。

そう、病院というのは生と死の境界と言いますか、いわゆる「普通」ではない空間です。

「普通」に勤めていた母にも、ある日ついに日常では考えられないことが起こりました。

ある時、母の勤めていた病棟に一人の患者さんが入院されました。

その患者さんは不治の病(恐らく末期ガンか何かでしょうか)にかかっており、もう長くはない体だったとのこと。

それを知った家族の方はその方を気遣うでもなく、冷たい態度に終始していたとか。

なかなかお見舞いに来ないのは当たり前で、たまに集まると葬儀や遺産に始まる身勝手なお金の話ばかり。

母もそれを聞きながら患者さんのお世話をするのは忍びなかったと言います。

そしてそんな日々の中、その患者さんは家族に見守られるでもなく、ついに寂しい最期を迎えられました。

患者さんが亡くなられた事を伝えても、家族の方は電話で連絡をよこす程度。

患者さんはそのまま霊安室に運ばれていったそうです。

そしてその日の夜。

母はその日夜勤をしていたそうで、その患者さんが亡くなった事も聞かされていました。

かわいそうになぁ、あの患者さん…

そう思いながら母が仕事をしていると、突然電話の着信音が鳴り響きました。

こんな時間になんだろう、急患さんかな?

と思いながら母が電話に出ると、相手は女性の声で一言

「出棺です」

とつぶやきました。

母は

「ああ、あの患者さんのご出棺か…」

と思い、手の開いた看護婦を集めると出入り口に集まりました。

ところが、いくら待っても葬儀屋から迎えがくる様子はありません。

不審に思った母が葬儀屋に問い合わせると、




「うちにはそんな職員はいませんが」

と返事が返ってきました。

え!と思った母が問いただすと、葬儀屋さんは

「そもそもうちに女性の職員は…」

というようなことを話したそうです。

それじゃあ自分が聞いたあの声の主は?

そういえば、亡くなった患者さんは女性だった…

母はぞっとすると言うよりも、むしろ寂しさや同情を感じたそうです。

「きっとあの患者さん、寂しくて寂しくて私たちを呼んだのよ」

なんて母は話していました。

中学生だった私は

「ふーん」

というような顔で聞いていたのですが、確かに自分が同じ立場だったらと思うとかわいそうな気はしました。




 

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