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【ゾッとする話】慣れた場所なのにリングワンデリング

      2017/09/15

大学生の頃、トレーニングを兼ねてよく冬の西穂高に登った。

アプローチが楽なのと、小屋に通年人がいるので単独行でも何となく安心だからである。

何かあったらどうしようもないので本当に何となくだけど。

独標の先、西穂までの稜線は岩と雪のミックスで冬山の爽快さといささかの緊張を楽しめる初心者向けのコースだ。

とりあえず、今回はそんな雪山気分を味わう前、新穂高ロープウェイ山頂駅から西穂園地を出てすぐでのお話である。

2月の高曇りの日のことである。

前日までの雪でトレースも消え、股まで埋まるラッセルに苦労していた。

そんな日に限って重装備で来てしまったことを少し後悔したりもしていた。

すでに何度も通い慣れた道なので地図もコンパスも出さず、遠く木々の間に見える西穂の小屋を目標に汗を流していた。

どれぐらい歩いただろうか。

身体が慣れていないせいもあって、早めの休憩を入れようとした時である。

小さな段差を乗りこえた所で一本のトレースに出会った。

ラッセルの具合から見て今日の足跡だ。

下山してきた人のものだろうか。

誰ともすれ違わなかったことに不思議な気がしつつも、トレースに乗った。

人の気配に少し安心し、荷物を下ろしてテルモスの紅茶を飲んだ。

トレースは樹林帯の中を小屋に向かって続いている。

僕は方向を確認して再び歩き出した。

ペースもあがり、そろそろ最後の急坂にさしかかるころかな、と思った頃、目の前に小さな小屋が現れた。




最初に通過した、ロープウェイ駅すぐ近くの小屋だった。

恐怖感はなかったが、頭から?マークをたくさん出して思わず座り込んでしまった。

西穂山荘に向かっていたつもりが、いつの間にか出発点まで戻ってきてしまったのだ。

いわゆるリングワンデリングという奴だ。

リングワンデリングは視界の効かない吹雪の中とかで起こるものだとばかり思っていたので驚きであった。

他人のトレースだと思っていたのは、実は自分の足跡だったのだ。

どおりで歩幅が合うと思った。

このことがあっても冬の西穂通いは毎年行っていて、恥ずかしいのだが実はその後、2度同じ所でリングワンデリングをしてしまった。

いずれも2月の高曇りの日のことであった。

何かあるような気がするのは気のせいなのだろうか。





 

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